2008年08月06日

海を歩くねこのお話し

勢いであと一つ投稿(最近、勢いでしか書けません)。

夏スペに参加してくれてるクラスの女子が、わざわざ図書館から一冊の本を持ってきた。これ。

海を歩くねこのお話し
竹下文子著『黒ねこサンゴロウシリーズ5・霧の灯台』偕成社

「先生、この本すごい。ちょー泣いた。読んでみてー」とのこと。

「泣いた?」と僕。

「すごく泣いた」と彼女。

「なんで?」と僕(この発言、ちと冷めてるな)。

「んーーー、うまく言えないけど、感動するわけ」と彼女。

「どこが」と僕(こんな教育的態度いけないね)。

「もーーー、まずは読んでさー」と彼女(イライラーしてる)。

「よし読もう!!」と僕。

こうやって本を持ってきてくれるのって、嬉しい(こんな些細なことだけでも、僕は「愛されてる」と思うのです。イヤイヤ、「相手にされてる」かな)。でももう少しきちんと勧めて欲しい。まあ、しかしそれは、勧め方をきちんと教え切れてない僕の責任なのだから、最後は素直に受け取る。読んでみて、感想を共有してから勧め方を教えよう、うん。

読んでみる・・・・・。


泣けた。なだくるくる。


いわゆるハードボイルドもの。海んちゅ、いや海まやーのお話し。さばさばと物語が展開していく。そこらへんのもったいぶりのなさは、この本を紹介してくれた彼女らしい。まわりくどくなくていい。

死者の存在によって、主人公の焦燥感や欠如感が癒されていく。異質な存在との接触から、自己を顧みる契機を得る。なんかどこかで読んだような・・・。そう、この物語、なんだか村上春樹のモチーフにダブるのである。だからすごく親近感をもってグイグイ読んでいった。


「なかなかいいね、と、カイがいう。あんたもさ、と、おれがいう。/船は、青い波の上を、とぶようにはしっていく。おれにも、いつか、ハッピーエンドがくるだろうが、それは、まだずっと先のことだ。それまで、おれは、生きる。船は、はしる。そういうことだ。」

読んでいると、文章の行間にコメスセイキが転がり始める。行間にのさばってるのは欲張りなオレばかり。焦ってるのは、足りないよぉって叫んでるのは、このオレじゃん。与えられたものに文句や注文ばかりつけて、精一杯向き合ってないじゃないか、オレ。まずはやることだ。不平不満はそれからでも遅くないじゃない。まずはやろう。誠実にやろう。「生きる」ってそういうことなんじゃないかな。何だかとても強引にそういうことを考えさせられた。恐るべし児童文学。


やっぱ読書っていい。さて、この本を紹介してくれた10歳の彼女は、果たしてこの本から何を得たのだろ。何よりもそれが知りたいよな。




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Posted by sky1973629 at 00:17│Comments(4)本を読む
この記事へのコメント
セイキ、良い先生だよ。
生徒がさぁ、こうやって接してくるって、
それだけセイキは愛されてるんだよ。

僕も気になるな、その本。
近くの図書館へ行って探してみよう。

児童文学って侮れないよ。
大人になって忘れていた大事な何かを思い出させてくれるから。
Posted by mattomatto at 2008年08月06日 14:58
mattoくん>
ありがとね。そう言ってもらえると嬉しい。子どもと過ごす毎日はサイコーよ。ずいぶんと大人になっちゃったな、と思える日々です。ぜひ読んでみてみてね。
Posted by コメスセイキコメスセイキ at 2008年08月06日 17:38
ずい分と大人びた読書をする生徒ちゃんですね^^
心が豊かなんだろうなぁ~・・・

生徒と本の交換ってすごくいい!
間接的に生徒を知ると、また視点が変わるかも~っ。

私もその本、気になってきました!
図書館いって探してみます♪

『霧の灯台』ですね
Posted by ミユミユ at 2008年08月07日 09:47
ミユさん>
コメントありがとね。ハードボイルドものなので、好き嫌いがあるかもしれません。でも、アイデンティティをえぐる展開は、その無駄のない展開は一読の価値があると思う。いろいろな生き方がある分、生きにくい世の中でございます。与えられたものでがんばろうと思っても、誘惑はここそこに転がっていて、焦ってばかり。「ホントにこれでいいの?」なんて。そういう苦しみを子どもたちと分かち合いたい。そう思う今日この頃でございます。なんてね。
Posted by コメスセイキコメスセイキ at 2008年08月08日 01:29
 
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