2008年02月04日

まやかしの教育

NHKの「プロフェッショナル」は使える。
人の気高さ、実直さ、忍耐力を、そして何よりもサクセスストーリーを、子どもたちに生き生きと伝え
てくれる。こんな力強い教材めったにない。そんなこんなで授業を作る。自己実現という一つの道徳
教育としても、昨今流行のキャリア教育としても扱えるのさ。しめしめ。

パティシエ・杉野英実を授業化。メインテーマ「当たり前を積み重ねれば特別になる」ってね。

案の定、子どもたちは、「他のどこにもない菓子」を作り出す、杉野の仕事に食らいつく。そして驚く。
彼のポリシーが「当たり前」にあることをさ。

うんうん、と頷きながら授業を進めつつ、ふと思う。
彼のメッセージは強い。何よりも子どものレベルで分かりやすいのだ。子どもも当たり前の日常を、
それぞれの家と、この学校という箱を中心に過ごしている。そこで言われることは、そのほとんどが
人間として「当たり前」のことなのだ。だから、「当たり前」という言葉を通して、子どもたちはいろん
なことを重ねるだろうな。で、やっぱり僕はそこで躓く。

「当たり前」の積み重ねでキャリア的に特別になる・・・という教えは、ちょっと残酷だよな・・・ってね。
だって、彼はやっぱ普通じゃないの(それは本を読めば嫌というほど伝わります)。希有な精神力。

いろんな有名人が、いろんなポリシーを披露してくれる。それをメディアと、そしてわれわれ教育関
係者が過剰に喧伝する。イチロー、松井・・・。でもさぁ、極めて常識的に考えれば、そのポリシーは
さ、彼のキャリアのすべてじゃないんだよね。彼らが築き上げた地位は、希有な彼らの精神力によっ
て貫かれた努力の賜物であり、それを推し進め暖かく(厳しく)支えてくれる生活環境があったから
に他ならない。そういうバリューセットの中で作り上げられたのが彼らであり、それは一つひとつの小
さなポリシーが成し遂げたものではないわけさ。

なのに・・・分かりやすい授業を標榜すればするほど、扱うポリシーは授業テーマとリンクされることで
最小限に限定され、あたかもそれがプロフェッショナルになるための最短方途のように扱われる・・・。

これって、まやかしである。

「夢」というのは、健全で望ましい行動を促進するアクセラレータだ。「夢」は教育者の味方。その夢が
破れ、それに費やした日々を極めて冷静に分析したとき、真っ先に恨まれるのはメディアか僕たちで
す。

何よりも、「夢」が破れないことを祈る(拝)。


同じカテゴリー(教えること育てること)の記事
冬休みのお仕事③
冬休みのお仕事③(2013-01-06 13:54)

冬休みのお仕事②
冬休みのお仕事②(2013-01-06 03:25)

冬休みのお仕事①
冬休みのお仕事①(2013-01-05 14:37)

生徒指導主任なので
生徒指導主任なので(2012-06-09 08:20)

元気にするのが
元気にするのが(2012-05-12 10:04)

教えるということ
教えるということ(2012-04-30 03:18)


 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。