海を歩くねこのお話し
勢いであと一つ投稿(最近、勢いでしか書けません)。
夏スペに参加してくれてるクラスの女子が、わざわざ図書館から一冊の本を持ってきた。これ。
竹下文子著『黒ねこサンゴロウシリーズ5・霧の灯台』偕成社
「先生、この本すごい。ちょー泣いた。読んでみてー」とのこと。
「泣いた?」と僕。
「すごく泣いた」と彼女。
「なんで?」と僕(この発言、ちと冷めてるな)。
「んーーー、うまく言えないけど、感動するわけ」と彼女。
「どこが」と僕(こんな教育的態度いけないね)。
「もーーー、まずは読んでさー」と彼女(イライラーしてる)。
「よし読もう!!」と僕。
こうやって本を持ってきてくれるのって、嬉しい(こんな些細なことだけでも、僕は「愛されてる」と思うのです。イヤイヤ、「相手にされてる」かな)。でももう少しきちんと勧めて欲しい。まあ、しかしそれは、勧め方をきちんと教え切れてない僕の責任なのだから、最後は素直に受け取る。読んでみて、感想を共有してから勧め方を教えよう、うん。
読んでみる・・・・・。
泣けた。なだくるくる。
いわゆるハードボイルドもの。海んちゅ、いや海まやーのお話し。さばさばと物語が展開していく。そこらへんのもったいぶりのなさは、この本を紹介してくれた彼女らしい。まわりくどくなくていい。
死者の存在によって、主人公の焦燥感や欠如感が癒されていく。異質な存在との接触から、自己を顧みる契機を得る。なんかどこかで読んだような・・・。そう、この物語、なんだか村上春樹のモチーフにダブるのである。だからすごく親近感をもってグイグイ読んでいった。
「なかなかいいね、と、カイがいう。あんたもさ、と、おれがいう。/船は、青い波の上を、とぶようにはしっていく。おれにも、いつか、ハッピーエンドがくるだろうが、それは、まだずっと先のことだ。それまで、おれは、生きる。船は、はしる。そういうことだ。」
読んでいると、文章の行間にコメスセイキが転がり始める。行間にのさばってるのは欲張りなオレばかり。焦ってるのは、足りないよぉって叫んでるのは、このオレじゃん。与えられたものに文句や注文ばかりつけて、精一杯向き合ってないじゃないか、オレ。まずはやることだ。不平不満はそれからでも遅くないじゃない。まずはやろう。誠実にやろう。「生きる」ってそういうことなんじゃないかな。何だかとても強引にそういうことを考えさせられた。恐るべし児童文学。
やっぱ読書っていい。さて、この本を紹介してくれた10歳の彼女は、果たしてこの本から何を得たのだろ。何よりもそれが知りたいよな。
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